2013年09月05日

父と母の両方から贈与を受ける場合、「相続時精算課税制度」の適用関係は、どうなるのでしょうか?

父と母、それぞれについて「相続時精算課税制度」と「暦年課税制度」を選択することが可能です。必ずしも両親共に同じ制度を選択しなければならないわけではありません。

1.父と母を分けて選択が可能
 相続時精算課税制度は、贈与の年の1月1日において65歳以上の親から20歳以上の子への贈与に適用できます。父と母が共に65歳以上なら、20歳以上の子は、父と母、それぞれについてこの制度を選択することが可能です。例えば、父との間では「相続時精算課税制度」を選択し、母との間では何ら選択しなかったなら、母との関係は「110万円非課税枠の暦年課税」のままでいることになります。当然、逆のケースもあり得ます。すなわち、贈与を受ける子が相続時精算課税制度の選択につき、父と母それぞれについて取り決めればいいということです。

2.父と母の両方から相続時精算課税制度の適用を受けたい場合
 相続時精算課税制度の適用を受けたい場合には、その贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与を受けた子が、その子の所轄の税務署に、選択の届出書を贈与税の申告と共に提出します。父と母の両方から同一年に贈与を受け、この制度の適用を初めて受けようとする場合は、父と母の2つの選択の届出書を提出する必要があります。

3. 父と母のどちらか一方のみ相続時精算課税制度の適用を受けたい場合
 両親から同一年に贈与を受け、相続時精算課税制度を父のみ選択して、母からの贈与は選択しなかったとします。この場合、翌年の贈与税の申告は、父からの贈与については相続時精算課税制度の申告書(初年度は選択届出書を添付)を提出し、母からの贈与については従来の110万円非課税枠の申告書を提出します。このように、2種類の贈与税の申告書を提出する必要があります。

4.相続時精算課税制度と暦年課税を上手に利用する方法
 相続時精算課税制度には、贈与者の相続財産に取り込まれるというデメリットが存在します。一方、従来の110万円まで非課税の暦年課税は、相続開始前3年以内の贈与を除いて相続財産に取り込まれることはなく、切り離しが可能です。したがって、相続財産を贈与によって減らすという観点からは、暦年課税を利用するのが確実な対策でしょう。
 父との間で相続時精算課税制度を選択すれば、二度と暦年課税を利用することはできません。ただし、母を利用して暦年課税と同じ効果を得ることは可能です。
例えば、父から、課税価額3,000万円の高収益アパートと、父と息子2人が共同して経営する同族会社の株式を3,000万円贈与したいといわれているとします。
父→相続時精算課税制度を選択し、アパートの贈与を受けます。
母→相続時精算課税制度を選択せず、暦年課税。
このようにして、同族会社の株式は、母から父へ従来の暦年課税を利用して贈与し、贈与を受けた母から当該株式を息子へ、同じく暦年課税を利用して贈与します。
 自社株は将来の評価が不確実な財産であることから、相続財産に取り込まれる相続時精算課税制度を選択して贈与するのは、不安が残ります。このような場合には、上記のように母を利用することにより、父からの暦年課税と同じ効果を得られるのです。
posted by 相続税 at 09:57| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする
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